前回ブログで、多摩花賣所の志村三枝さんの事を書かせていただきました。
もう少し続きを書きます。
彼女の店は、東京都八王子にあります。
今のお店の形態になるまでにも、いろんなエピソードがあったようですが、
今日は、先日聴いた、ちょっといい話を書かせてもらいます。
志村さんの店の前を、毎日のように通りかかる、少し足の悪い年配の女性が
この近くにはない紀伊国屋の買い物袋を下げて見かけるそうです。
志村さんは、誰にでも気軽に声をかける気さくな方なので、ある日声をかけると
買い物にはこだわりがあり、足がお悪いにもかかわらずわざわざ出かけているそうです
そのご婦人は、志村さんに「花屋さん、わたしは花は嫌いなの...」と言われたそうです。
なぜですか?志村さんが聴くと「花は枯れるじゃない、汚いでしょ」
それでも何度か挨拶を交わしたある日、その方が店頭の¥500の小さなアレンジを
買っていかれたそうです。
それから10日ほどして、
店に来られ志村さんに「おかしいのあの花、10日持ったわよ!何か薬でも使っているの」
志村さんは、特別なことはしていません、ただ生産者さんは吟味して品揃えしていると
答えたそうです。
その後に、真ん中の薔薇が枯れたのでと言って、バラを1輪買って足されたそうです。
それから、おばあさんは毎日のように店に立ち寄られ、花好きになったそうです。
そのうちに、あまり花が綺麗だからと言って、絵心もないのに買っていかれた花を
絵に描くようになったそうです。
ちょうど昨年の今時分は、
新潟の魚沼の生産者、鈴木健市さんのシャクヤクを
買い求め、お気に入りで絵に描いてくれたようです。
鈴木さんは、こだわりのある生産者さんで、主にシャクヤクと百合を生産しています
魚沼は一年中花を作れる産地ではありません、雪深い冬は別な仕事で家計を
支えながらこの年初めて、個人での出荷にあえて切り替えて、独自の生産を
試みている方です。
志村さんは、いつもそんな生産者さんを見逃しません。
志村さんは、おばあさんの絵を携帯に撮って、写真を鈴木さんに見せたそうです。
そのことを、またおばあさんに伝えると、わざわざその絵を生産者に差上げてください
と持ってこられてそうです。
志村さんは、それをわざわざ額縁に入れて、魚沼の鈴木さんに送ったそうです。
その後、魚沼の鈴木さんの芍薬は出荷も終わり百合の出荷が始まりましたが
昨年のその頃は、百合が暴落の年でした。
初めての個人出荷で、手塩にかけた百合も、この相場の中で目も当てられない価格で
低迷していました。
そんな辛い時に、
鈴木さんは、おばあさんの絵を見て、この花を見て喜んでくれている人
のことを想い、頑張る力をもらうそうです。
そんな話しを聴きながら、生産者と実需者を繋いでいる、志村さんの心意気に
感心しながら、自分こそがそういった事を、していかなくてはいけないと反省しました。
多摩花賣所の志村さんは、いつもさりげなく、そんな話しを聴かせてくれます。
そんなさりげない彼女の心意気が、人の心を動かしていくと強く感じます。
今日もどこかで志村さんの希望の匂いを感じて、花が人を繋いでいくんですね。